約 42,144 件
https://w.atwiki.jp/ryouhouji/pages/1921.html
壱 弐 参 極 名前 [怒水着]大威徳明王 (ぬみずぎ だいいとくみょうおう) セリフ 壱 「どんな場所にも悪鬼は沸くんだけどねェ」 弐 「今日くらいはのんびりしたいし…」 参 「うん、やっぱりたまには暴力はなしにしよう」 極 「たまには休んだっていいでしょう?」 解説 仏教の信仰対象にして密教特有の「明王」の一柱。西方の守護者といわれ、その姿は六面六臂六脚で神の使いの水牛にまたがっている。何とも恐ろしげな姿であるが、人々を教えに導き、悪鬼を滅するために敢えてこのような姿をしているのだと言われている。 レアリティ 必要法力 攻 防 知 壱 SSR 31 7390 11490 6180 弐 8570 12410 6670 参 9260 13410 7210 極 10280 14750 8000 術式名 属性 MAX Lv 効果 専:休息ノ磨滅 雷 10 味方単体の攻防アップ お邪魔戦術式 発動率 攻撃力アップ 中 備考:
https://w.atwiki.jp/jcbr/pages/502.html
0384:暴走列島~信念~ 血が止まらない。 背負った新八の右腕からにじみ出る血液は越前の右肩を染め続けていく。 (失血死って苦しいっていうよね……) 嫌な事実を思い出してしまい慌てて思考を切り替える。 (……乾先輩……) 先程の放送で、ついに呼ばれてしまった最後の一人。 いっつも飄々としていて、嬉々として怪しげな汁ばっか作ってて、人のデータがどうとか言ってて、俺があんまり好きじゃないって知ってるのに牛乳飲めってうるさくて。 …………そういえば、俺が初めて声を出して応援したのは、アンタだった。 (……アンタのテニス、嫌いだけど嫌いじゃなかった) ……やっぱり、もっと違うことを考えよう。 今、乾先輩のことなんか考えたら足が止まってしまいそうだ。 (そういえば、あの女の人は一体何だったんだろう) ああやって襲ってきたっていうことはこの殺し合いに乗っちゃったってことなのかな。 なんだか妙な武器を持っていたけど……。 そう言えばどうしてあの人は俺たちにあの場でとどめを刺さなかったんだろう。 なにか理由があったのかな。 こんな風に俺が考えたって答えがでるわけじゃないけど。 自分より大きな新八を背負う越前の歩みは遅々として進まず、その遅さが新八の命を削っていっているようで焦りが更に疲労を上乗せする。 それでも足を止めるわけにはいかない。 今のところあの危険な女は追ってきてはいないようだけど……追ってこない確証などないのだ。 「……ね、うえ……」 聞いたこともないような頼りない声で、新八が何事かを呟いた。 ずれ落ちかかる新八を背負い直し、越前は真っ直ぐに前を見据える。 肩に、背に、腰に、足に、かかる負担はそのまま人一人の命の重さで……今まで考えたこともないような重い枷となり容赦なく越前を地に倒そうとする。 だけど。 (死なせない……絶対に……。死なせてたまるか……!) 進む先に当てなんかない。 ただただ、新八をどうにかしてくれる人間に出会いたい。 こんな簡単な止血よりも効果的な……できれば劇的な治療をしてくれる人物に。 最悪の状況の中、それでも負けることを嫌うテニスの王子様は一歩一歩、確かに進んでいく。 ほんの数時間前に……先輩の乾が、今の越前と同じように仲間を背負って走り続けたように。 今、門は閉じられた。 選んだ赤き修羅門は斗貴子の胸の奥へと沈み、決意の火となってその心を照らす。 道に転々と続いていく血痕。 それはまるで斗貴子を人ならざる世界へと誘う篝火のようで。 (スカウターを使うまでもないな……) スカウターのスイッチを切り、血痕の続く先を見やる。 荷物は拾った。銃も手にした。 もう、立ち止まっている理由はない。 しばし血痕を見つめ、斗貴子は、ふ、と息を吐くとそれに沿って歩き始める。 もう、躊躇はしない。 殺す。 今度こそ。 確実に。 そう思いながらも心の片隅で深手を負ったであろうあのメガネの少年の安否を気にしてしまう。 いや、はっきりと「無事であればいい」と思ってしまい、そんな自分を嫌悪する。 傷つけたのは――――殺そうとしたのは、しているのは自分なのに。 決意したばかりだというのにどうしてこう自分は弱いのだろう。 ――――――――『最後まで貫き通せた信念に偽りなどは何一つない』 誰よりも尊敬する戦士長の言葉が胸をよぎる。 この腐ったゲームに巻き込まれた全員を……カズキを日常に帰すためならば。 そのためなら、どんなに蔑まれようと構わない。 「私は……悪にでもなる」 唇を噛みしめ呟く。 緩やかだった歩みが速まり、徐々に斗貴子はスピードをあげる。 血痕はまだ続いている。 ――――――――新ちゃん、新ちゃん ――――――――おい、新八 ――――――――新八~新八~ あああうるさいなもう! 嫌になるほど聞き覚えのある沢山の声が一斉に僕の名を呼ぶ。 ああもう。またですか。またこのパターンですか。 いい加減起きろよ、僕。 今けっこうなピンチなんだからさ。 って――――――――――――――――――――。 「僕まだ生きてるゥゥゥゥゥううううう?!」 「……一応ね。耳元で怒鳴らないでくれる?うるさいから」 「あれ?越前くん?あぁ……やっぱあれは夢だったんだ……。よかった……。そうだよな。必殺凶悪ミニスカセーラー狂戦士に突然襲われるなんてありえな……」 「それ現実だから」 「そんなあっさり希望を消さないでェェェ!」 「てゆ~か起きたんなら降りて。重いから」 「…………ハイ。スイマセンでした」 呆れたような越前君の声に僕は慌てて越前君の背中から降りた。 と言うか、慌てて降りたせいで転んでしまい、怪我した肩を強打して転げ回った。 「痛ってェェェェェ!痛いよコレちょっとやばいよ!」 肩も腕も痛いけどなんか頭もぼーっとしてて、今ならいろんな見えちゃいけないモノが見えちゃいそうだ。 「……貧血だね。当然といえば当然だけど」 そう言って越前くんは僕の隣に座り込む。 僕の腕を押さえ、もう一度布をきつくまき直してくれる。 出会ったときと同じ様な容赦のない治療に悲鳴を上げつつ、僕は改めて周囲を見回した。 よく見てみればここは林の中。 しかも茂みの影になっていて、向こうから見た限りではかなり僕たちは見つけづらいだろう。 「越前くん!肩!」 ぐっしょりと赤く染まった越前くんの肩が目に入り、心臓が止まりかけた。 越前くんも怪我をしてたんだろうか。 「……あぁ。……アンタの血だから、これ」 あっさりと言った越前くんの言葉に安堵しつつ、僕は越前くんの肩がこうなってしまったわけに思い至った。 越前くん……僕を背負ってきてくれたんだ。ここまで。こんな小さな体で。 よく見たらすごい汗かいてるし。 「そういえば君の怪我は?!」 「平気。かすっただけだし」 そう言うけど、切られていたいわけはない。 でも越前くんは弱音なんか漏らさない。 意地っ張りなのか本当に強い人間なのかはまだよくわからないけど。 「越前くん……。ありがとう……」 「……別に」 僕の言葉に越前くんはプイ、とそっぽを向いてしまった。 照れてるんだ、ってことがわかり越前くんに気付かれないように小さく笑う。 肩は物凄く痛いけど、なんだかちょっと気分がいい気がする。 「僕、ここに来て最初に会えたのが君で良かったよ」 「……そ」 相変わらず越前くんの返事は素っ気なかったけど、そんなことはどうでもいいや。 「もう少し休憩したら、行くよ」 「……うん」 頷いて僕は、ぐらぐらする頭を我慢しながら空を見上げた。 「……ねえ、越前くん」 「なに?」 「朝の放送……誰が呼ばれた?」 「…………」 「……そっか」 夢であればいいと思ってたけど……やっぱり現実だったんだ。 「……ナンバー2……」 僕の呟きに、越前くんも曇り空も、誰も何も答えなかった。 突然、アスファルトに残っていた血痕が途切れた。 足を止め、斗貴子は逡巡する。 あのメガネの少年の血が止まったのか。 それとも進路を変えたのか。 前者であればいい、と反射的に思ってしまい何度目かの自己嫌悪に陥る。 さっきからこの繰り返しで、そのことも斗貴子の自己嫌悪に拍車をかける。 頭を振り、無理矢理に思考を切り替えた斗貴子はスカウターのスイッチを入れた。 「…………」 いくつかの反応を見、眉を寄せる。 斗貴子の今いる場所からわずかに左手側にある反応は、数字の小ささからみてあの少年達だろう。 問題はその先。 ここ、京都から十分に近い所……おそらく大阪と思われる辺りに4つの反応が固まっている。 そのうち3つはたいした数字ではないが……残りの一つははっきりと斗貴子よりも高い戦闘力を示している。 そのうえ。 (なんだ?こっちへ向かってくるこの4つの反応は……) まとめて4つ。高めの数字を持つ人物3人+そこまで高くない数字の人物1人が、かなりのスピードでこちらへ向かってくる。 (4人で走って行動している?……いや。それは無理がある。……そうか、電車か!) 今までまったく頭になかった移動手段がここにきて使われているというのか。 恐らくは……あの放送のせいだろうが。 (このままいくとこの2つのグループは遭遇する) それが一体どのような意味をもたらすのか。 大きなグループができあがるのか……それとも血で血を洗う戦闘が起こるのか。 しばし考えるも答えは見えない。 「……今は」 今はとりあえず、“人数減らし”に集中すべきだろう。 そう思い斗貴子はショットガンをしまった。 距離を考えると微妙なところだが、発砲音を聞きつけられないとも限らない。 ここは安全に確実に――――。 「バルキリースカートで……」 心の奥底では、人を殺すために使いたくなかった自分だけの武器で。 私は。 人を殺す。 気配を消し、足を踏み出す。 数メートル進んだところで、気配を殺していたのが馬鹿らしくなるような会話が聞こえてきた。 「だから僕はこう叫んだんだ。『ノーパンになって得られる平和なんか俺は認めんぞォォ!!』って」 「……ふーん」 「だってそうだろう?!姉上はどう考えたってSなのにMになんかなれるわけないんだよ!」 「……ふーん」 (……一体何の話をしているんだ) 趣旨のよくわからない話に毒気を抜かれてしまい思わず足を止める。 木の影に隠れそっと茂みの中を覗き込むと、2人の少年の背中が見えた。 間違いない。あの子達だ。 真面目なのかふざけているのか判断を付けかねる彼らの会話はなおも続いていく。 (私は何をしているんだ!) さっさと、バルキリースカートの刃を彼らの背中に突き立てればいい。 卑怯者らしく、悪者らしく、あっさりと。 「……誰?そこにいる人」 いつ気付かれたのだろう。 小柄な少年の鋭い瞳が、茂みの中からこちらを睨み付けていた。 沈黙が広がる。 あの木の影にいる人は動かない。 「出てくれば?」 決して気の長い方じゃない俺の言葉に姿を現したのは、予想通りの人物だった。 あまり、いや、かなり再会したくなかったオネエサンだ。 「で?オネエサンは俺たちを殺しに来たの?」 さりげなく腰を上げ、新八さんを庇える位置に移動しながら目前の人に尋ねる。 新八さんの顔色は未だに物凄く悪い。 土気色っていうんだっけ?こういう色。 乾汁を一気に10杯くらい飲んじゃった感じだ。 「……ああ。私は……君たちを殺しに来たんだ。……それが……君たちのためだから」 うわ。なんかこの人すっごい眉間に皺寄ってる。……部長といい勝負。 思い詰めてます、って顔は見ていて痛々しいくらいに怖い。 「は?意味わかんない」 視線はそのままに、俺はいつでも駆け出せるように心を準備する。 武器も何にもない今、このオネエサンと戦って勝てるとは思えない。 それに俺にとっての勝利はここで戦って勝つことじゃないし。 俺にとっての勝利は、無事に帰って全国制覇をすること。 テニスを、またすること。誰も殺さないし、殺されない。 これ以外にはない。 「許してくれとは言わない。憎んでくれて構わない。私は――――――――――――」 キチキチと変な音がする。 オネエサンのスカートが少しだけ持ち上がり、中から鈍く光る刃物が姿を現す。 完全に刃を伸ばしたらしいその鎌の切っ先が俺たちに向く。 空気がピリピリして、全身に悪寒が走る。 「君たちを殺す」 「やだ」 一言言い返し、俺は立ち上がるときに持っていた土をオネエサンに投げつけた。 思わぬ目くらましを喰らって、オネエサンの注意が一瞬だけ逸れる。 その隙に新八さんの腕を掴んで俺は全速力で走り出そうとして――――――――――――。 「無駄だ」 確かに背後にいたはずのオネエサンが、どうやったのか俺たちの目の前にふわりと舞い降りた。 「……必ず後で生き返らせる。だから今だけ我慢して私に殺されてくれ……」 「どういうことですか?!」 何言ってんのアンタ、と言おうとした俺の言葉を遮って、新八さんがオネエサンに詰め寄った。 「生き返らせるって、優勝するってことですか?でもアレ、生き返るのは一人だけで、それだってインチキくさいじゃないですか」 「……全員が生き返って、元の世界に戻れる方法があるんだ」 「……なにそれ」 何言ってるの、この人? 頭がやられちゃったんだろうか。 「何かわけありみたいですね。話、きかせてくれませんか?」 思いっきり疑いの目を向ける俺を退けた新八さんの言葉に、オネエサンは一瞬迷った後「わかった」と頷いた。 「馬鹿じゃないの?」 予想通りの反応だが、言われた言葉は予想よりも率直なモノだった。 ポカンと口をあけたままの志村にも、肩をすくめる越前にも、もう何も言うつもりはない。 こうなることはわかっていた。 自分だって初めてこの話を聞いたときは頭から疑っていたのだ。 『7つそろえると竜型の神が現れ何でも願い事を叶えてくれる玉』 お伽話の中に出てくる夢話と同じくらい不確かな存在。 だが――――。 (私は、この小さな希望に賭ける……!!) 全員を救うために。今。この二人を。 「アンタだって、本当は信じてないくせに」 まったく予想外な言葉に、動きかけていたバルキリースカートがピタリと止まった。 「……どういうことだ?」 「そのまんま。本当はアンタも信じていないんでしょ?そんな話。だから」 「だから……僕たちを殺すことをそんなに躊躇っているんでしょう?」 越前の言葉を引き継ぎ、志村が口を開く。 彼らを殺すことを躊躇っていることを見抜かれ、私は彼を睨み付けた。 「……そんなことはない……!」 「だったらどうして僕たちを見つけた瞬間に殺さなかったんですか?」 「それは……!」 「それに、どうして僕たちにこんな話をしたんですか?本当にドラゴンボールの話を信じているんなら僕たちを殺してさっさと次を探しに行けばいいのに。こんな話をする必要なんかないのに」 志村の言うことはもっともだ。 本来ならば一刻も早く人を減らし……ピッコロを見つけ、優勝してもらわなければならないはずなのに。 「……信じてないから、だから誰かにこの話を肯定して欲しかったんじゃないですか?」 「…………」 初めてこの話をした人はリサリサという名の女戦士だった。 そして、つかさ。ケンシロウ。サクラ。アビゲイル。 皆が皆――――言った。『そんなことはありえない』のだと。 唯一人、クリリンと同じ世界からきたヤムチャだけがドラゴンボールの存在を信じ……いや、知っていてあっさりと計画に乗ってはいるが……。 ヤムチャ以外は、誰一人この話を信じてくれなかった。 一度ホムンクルスになった人間が、もう元には戻れないのと同じように……死んだ人間はもう生き返らないのだと、本当は心の中では、私は…………。 「それでも……私は希望を捨てることはできない……!!」 「現実を認めるのが怖いの?」 「なっ……!」 「新八さんの言うとおり、本当にその話を信じてるんならアンタは俺たちをあの小屋で殺してなくちゃいけなかったんだ。なのにここまで来てもアンタはそれができない。アンタは弱いんだ。仲間が死んだ現実を認めることも、嘘みたいな話を本気で信じることもできない」 自分よりも幼い小柄な少年の瞳が、私を真っ直ぐに射抜く。 頼りなさそうなメガネの少年の瞳が、私を真っ直ぐに射抜く。 ギリギリと奥歯を噛みしめてしまうのは、この二人の言うことが正しいからか。それでも。 「……『最後まで貫き通せた信念に偽りなどは何一つない』。だから私は最後まで……!」 貫き通す。 自分の信じた希望を。 例えこの信念が悪なのだとしても。 「アンタみたいな弱い人間に、信念なんか貫けない」 「…………れ……」 俯いた自分の声は思ったよりも低く、感情が膨れあがる。 (私は決めたんだ!もう覚悟をしたんだ!) なのにどうして。 どうしてこんなに、心が乱れるのか。 キチキチと小さな音を立て、死神の鎌が持ち上がる。 だが、越前は退かない。 志村も退かない。 「アンタみたいに弱い人間に、俺は絶対に殺されてなんかやらない」 「…………黙れ…………!」 志村の視線が、越前の言葉が、私の心に突き刺さる。 認めたくなかった、気が付きたくなかった自分の心が晒され、そこに言葉の刃が突き立てられる。 「俺は……絶対に負けない――――――――――――――――!!」 「黙れ――――――――――――――――――――っっ!!」 「越前くん…………!!」 鋭い刃が越前の眉間に一直線に向かう。 狙いは違わない。バルキリースカートの最大の特性は高速精密機動だ。 歯を食いしばり、越前は真っ直ぐに自分を睨み続けている。 逃げられないのか?いや、彼は……! ――――――――越前の眉間の皮膚に後3㎜というところで、刃の動きが止まった。 「……なぜ……」 ようやく出せた声は、自分でも驚くくらいに震えていた。 動けなかった、のではなく避けなかった越前は、なおも私を睨み続けている。 「なぜ……」 なぜ、私は迷ってしまうんだろう。 何度も何度も覚悟を決めたと、全てを捨てるのだと、そう思ってきたのに。 カズキを、全員を日常に帰すためならばと決意したはずなのに。 「簡単な事じゃないですか」 越前の隣にいた志村が、一歩踏み出した。 握りしめた拳が震えているのが見て取れた。 「自分の心に嘘ついたまま信念なんか貫けっこないんだよ!!アンタそんな簡単なこともわかんないんですか!!」 僕の絶叫が林の中に響き渡る。 大声を出したせいでまた頭がグラグラするけど、そんなのに構ってる場合じゃない。 目前のお姉さん……津村さんが呆然とした顔で僕を見る。 さっきまで地獄の鬼より怖い顔をしてたのに、今はその目が少し潤んでいる。 「それでも……私はもう引き返せないんだ……」 「引き返せないわけがあるかボケェェェェェ!そんなこと死んでから思え!!」 「ちょっと新八さん……」 びっくりしていた越前くんが僕を抑えようとするけどそんなことどうでもいい。 腹が立って仕方がない。 「何『自分だけが不幸』みたいな顔してんだ!大切な人を亡くしたのはあんただけじゃないんだよコノヤロォォォォォ!!」 「……」 呆然としたままの津村さんの胸ぐらを掴み、僕は思いつくままに叫び続ける。 ドラゴンボールが全てを解決してくれるなら僕だって信じたい。 でも死んだ人はどうしたって生き返らないんだ。 だから僕たちは。 「死んじゃったら生き返れないから!だから!気合いいれて生きてるんでしょ?!一回しかないから!」 叫んだせいで息があがる。 ただでさえ貧血だったのに酸欠までプラスされてきてない、これ? 「もう……私に構わないでくれ……」 俯いた津村さんが小さな声を出した。 「は?」 言っている意味がよくわからず聞き返す。 それでも津村さんは顔を上げない。 「今なら君たちを殺せない……。一人で考えたいんだ……。だから……」 「嫌です」 むかついたから即答してやった。 何言ってんだ、この人。 「あんた放っておいたら何するかわかんないだろ!それに……」 心臓よりも大切な器官があるって言ってましたよね、銀さん。 頭っから股間を真っ直ぐ貫く大切な器官があるって。 それは、自分の魂に収めた……折れてはいけない刀。 もう、僕は誰も目の前で死なせたくない。 誰にも誰かを殺させたくない。 この、津村さんにも。 「それに……そんな風に泣いてる女の人、放っておけませんよ……」 言われて初めて気が付く。 私の頬には、いつのまにかいくつもの涙が流れていた。 【京都府 朝】 【志村新八@銀魂】 [状態]:重い疲労。全身所々に擦過傷。特に右腕が酷く、人差し指、中指、薬指が骨折。上腕部に大きな切傷(止血済み)。 顔面にダメージ。歯数本破損。朦朧。たんこぶ多数。貧血。 [装備]:無し [道具]:荷物一式、 火口の荷物(半分の食料) 毒牙の鎖@ダイの大冒険(一かすりしただけでも死に至る猛毒が回るアクセサリー型武器) [思考]:1、斗貴子を止める 。 2、藍染の計画を阻止。 3、まもりを守る。 4、銀時、神楽、沖田、冴子の分も生きる(絶対に死なない)。 5、主催者につっこむ(主催者の打倒)。 【越前リョーマ@テニスの王子様】 [状態]:非親衛隊員。重い疲労。脇腹に、軽度の切傷(止血済み) [装備]:線路で拾った石×1 [道具]:マキ○ン [思考]:1、切れた新八を止めたい。 2、新八の傷を治してくれる人を捜す。 3、藍染の計画を阻止。 4、死なない 5、生き残って罪を償う 【津村斗貴子@武装練金】 [状態]:肉体的、精神的に軽度の疲労。左肋骨二本破砕(サクラの治療により、痛みは引きました) 顔面に新たな傷、ゲームに乗る決意:核鉄により常時ヒーリング [装備]:核鉄C@武装練金、リーダーバッチ@世紀末リーダー伝たけし!、スカウター@ドラゴンボール [道具]:荷物一式(食料と水を四人分、一食分消費)、ダイの剣@ダイの大冒険、 ショットガン 真空の斧@ダイの大冒険、首さすまた@地獄先生ぬ~べ~、『衝突』@ハンター×ハンター、 子供用の下着 [思考] 1、新八の言葉に動揺 2、ドラゴンボールについてもう一度考えたい 時系列順で読む Back 暗雲に包まれし世界 Nex A列車で交渉をしよう 投下順で読む Back インフェルノ Next 天に立つ者、地に伏すけもの 375:そして扉は閉ざされた 志村新八 388:関西十一人模様 375:そして扉は閉ざされた 越前リョーマ 388:関西十一人模様 375:そして扉は閉ざされた 津村斗貴子 388:関西十一人模様
https://w.atwiki.jp/mangaroyale/pages/542.html
キック力増強シューズ@名探偵コナン 津村斗貴子に支給された。原作では江戸川コナンが使用している阿笠博士の発明品である。 履くことにより、足のつぼを刺激して超人的な脚力を得る事が出来る。本来の使用者が小学一年生であるのに対し、 これを履くと大人をも上回る脚力が得られる。その筋力増強効果は、恐らく支給品随一だと思われるのだが、 やはり本来の使用者が小学一年生のため使用可能なものは極めて少ない。
https://w.atwiki.jp/ws_wiki/pages/8553.html
autolink DC3/WPR-P13 カード名:ピンクのフリフリ水着 姫乃 カテゴリ:キャラクター 色:赤 レベル:1 コスト:0 トリガー:0 パワー:5000 ソウル:1 特徴:《新聞》? 【自】 このカードが手札から舞台に置かれた時、あなたは自分の山札を上から1枚見て、山札の上か控え室に置く。 …… レアリティ:PR
https://w.atwiki.jp/koesta/pages/59.html
カード情報 カード名 [くらげじゃない!?]水着のお姉さん レア R コスト 5 タイプ 哀 マーク すばる 夏日 琴美 属性 表現 感性 声 スキル 水着美少女は負けず嫌い 一定回数[ 声 ]属性のスコアが[ 20 ]%上昇 台詞 きくらげはくらげじゃない…?し、知ってるわよ! スコア LV スコア LV スコア 1 11 2 1145 12 3 13 4 14 5 15 6 16 7 17 8 18 9 19 10 20 入手方法 水着のレッスン 関連ページ 「水着のお姉さん」役カード一覧 「水着のお姉さん」役衣装一覧
https://w.atwiki.jp/jcbr/pages/522.html
0414:一人で出来るもん ◆HKNE1iTG9I 【幕間の1/名前もない野生動物の場合】 彼女は、一度死んでいた。 最期の記憶は、迫る巨大な鉄の塊。危険なものであることは、承知しているはずだったのに。 空を飛ぶのは、一羽の烏。ビロードよりもなお黒い翼を広げ、 水面よりも尚青い空に、一羽の烏。 彼女に”分る”のは、”分らない”ということだけ。 記憶にない場所。自分が今まで住んでいた塒も、今はもう影すら見えず。 餌場だったはずの街―まるで動いているような模様を写す板や、雑多な人間―はもはや無く。 一羽、唯一羽で空を飛ぶ。 変わらぬ空で出会ったのは。 何故か意思疎通を行っているように見える、数羽の同族。 彼らは、彼女が鳥の言葉を解さない(鳥なのに!)と分ると、 まるで別種の生き物のように扱い、邂逅すら存在しなかったように飛び去って行った。 彼女の世界では、鳥類が言語を使って意思疎通を行っているというような記憶はなかったし、 そもそも複雑な言語という概念自体、彼女には存在しなかった。 そもそも、鳥が言葉を話すわけがない。ファンタジーやメルヘンではないのだから。 彼女は、そういう、所謂ごく普通の世界から、殺し合いの世界に招かれた。 (名を書くだけで人を殺せるノートがある世界ではあったが) 三十もの世界から呼び出された参加者と同様に、彼女もまた、 一つの世界から呼び出された贄の一欠け。 だが、彼女は世界の変容にも深い疑問を抱くわけでもなく。抱けるわけでもなく。 世界は常からままならぬものであるし、そして何より。 何より、彼女は単なる一羽の烏なのだから。 だから、彼女は飛び続ける。 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 【幕間の2/津村斗貴子の事情】 彼女は、既に死んでいるはずだった。 最後に思うは、自分が光を奪った勇者か。解体した、天馬のような雰囲気の少年か。 首を落とした、二人の少女か。愚かな、とてつもなく愚かな希望にすべてを賭け、自分に殺された青年か。 ―――陽光のような笑顔を持つ、守れなかった最愛の人か。 彼は、自分にとっての光だった。一番、守りたい人だった。 死ぬ時は一緒だと誓ったはずだった。…一緒に生きていくと誓ったはずだった! 地を駆けるのは、一人の女性。血濡れたブレードは翼の如く、 戦場よりも尚昏い大地に、独りの少女。 大切な人は既に亡く、自分は未だに生き恥をさらしている。 記憶に焼きつくのは、一つの誓い。唯そのためだけに、彼女は駆ける。 無力なものを手にかけ、他の参加者の光を奪って。丁度、武藤カズキという光が、彼女から奪われたように。 大切な人を亡くす悲哀は、身を裂くような喪失は、自分が何より知っているのに。 奇跡と呼ぶことすら憚られる御伽噺に全てを委ね、皆を救うためという大義名分を掲げて奪い続ける。 これこそ、偽善。 太陽の様な彼女の思い人と同様に、彼女―津村斗貴子もまた、偽善を背負い駆けていく。 自らの全てを、曝け出して、投げ出して、引っくり返してただ賭ける。明らかに分の悪い、勝ち目さえも分らない賭けに。 この全ても、狂気の遊戯の慟哭の一欠け。 彼女を見知った人間が見れば、昔に戻ったのかと驚くだろう。 彼女をよく知る人間が見れば、もう戻れないのかと嘆くだろう。 津村斗貴子は駆けていく。覆いようのない血の匂いを幽気の様に引き連れて。 目指す先は、ピッコロという参加者。己が心の羅針盤を、固定するため、それだけに。 宇宙人という荒唐無稽な存在に縛られなければ、彼女の心は崩れ落ちる。 彼女を支えることのできた、唯一無二の人間は今は亡く。誰も、代わりになどなれるはずもない。 だが、世界は彼女の変容にさしたる反応を返すわけでもなく。 世界は常からままならぬものであるし、そして何より。 何より、彼女も単なる駒の一つなのだから。 だから、津村斗貴子は駆け続ける。 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 【幕間の3/桑原和真の行程】 彼は、未だ死ぬわけにはいかなかった。 最後に見たのは、仲間の死に顔(デスマスク)。穏やかに微笑むその貌と、涙に崩れた自分の顔と。 歩を進めるのは、一人の少年(年齢的には) 黄金色に輝く装束は、自責の枷にも似て。 全てを優しく覆い隠す雪を越え、命への賛歌を奏でる、新緑の上を越え、 血塗られ汚れた奈落の底に、一人の少年(年齢的には)が。ただ、一人の。 死んだ。ボンチューは、自分の目の前で。翼は、ブチャラティは、まるで自分の与り知らぬ、遠い、遠い場所で。 自分のしたことは間違ってはいなかったと理解はできるが、納得することは微塵もできず。 あの時、自分が無理やりにでもボンチューを止めていれば。引き摺ってでも連れて帰っていれば。 あの時、戦力を分断させるような愚をおかさなければ-平易に言うならば、ヘタァ打たなければ、 死ななかったかもしれない。翼も、ブチャラティも、ボンチューも。 悲しませずに済んだかもしれない、泣かせずに済んだかもしれない―――ルキアを。 黄金の装束、今は鉛の如く。だが、それでも。 ―テメェの体引き摺ってでも、這いずってでも、オレァ戻るぜ。 ルキアんとこへ。承太郎んとこへ。雷電のとこへ。 心の内に、黄金を灯して。 ―泥水を啜ってでも、地べたでのたうち回ってでも、オレァ届くぜ。 フレイザードのヤロゥの首に。ピッコロのヤロゥの心臓に。主催者のクソッタレ共の喉笛に。 ―だから…だからよォ… 「バッキャロオオォォオオォォッ!何で死にやがった!!! ボンチュゥゥゥゥゥゥゥッ!!!ブチャラティィィィィィッ!!!翼ァァァァァッ!!!」 一人。唯一人。他に誰も聞くことがない怒号は、風に呑まれて記憶の果てへ。 「オレァ死なねェぞ!テメェ等を殺しやがったクソヤロウどもをぶっ殺し返して、主催者のクサレ外道も叩き殺して! 生きて帰って、雪菜さんと幸せな家庭を築いて、散々人生楽しみつくして、テメエ等がウンザリするほど生きて、生きて、生き抜いてやるからなァッ!! そっちに行ったら、テメェ等が血尿流して勘弁してくださいっていうまで、人生自慢し倒してやるから覚悟してやがれバッキャロオオオウゥゥ!!」 一人の少年(年齢的には)の叫び。それは、彼が一人ではあっても、独りではないという力強さを帯びていて。 というか、注釈付けるのも面倒くさいが、その顔は少年ってレベルじゃねーぞ! ともかく。 執拗に眠りを要求する身体を張り倒し、ともすれば縺れそうになる両足に檄を入れ。 少年は、唯ひたすらに歩き続ける。南へ。 あの場で待っていれば、仇敵に会えたことを知らず。 自分が、今何処を歩いているのかも知らず。 生きて帰ることができるのかも知らず。 だが、彼は世界の現実に絶望を持って返すわけではなく。 世界は常からままならぬものであると諦めていない上に、そして何より。 何より、彼は一人ではないのだから。 だから、桑原和真は歩き続ける。 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 【栃木県・街中/日中】 【桑原和真@幽遊白書】 [状態]:全身各所に打撲、戦闘によるダメージ大、重度の疲労、軽度の火傷。 次元刀が覚醒。しかしまだ不安定。 [装備]:蟹座の黄金聖衣@聖闘士聖矢 [道具]:荷物一式(水・食料一日分消費) [思考]1:悲しみと怒り。決意。 2:承太郎達との合流:とりあえず、南へ。 3:ルキアのことが気になる。合わせる顔がないとも考えているが。 4:友情マン達との合流、(友情マンに対し多少の罪悪感) 5:さらにフレイザード、ピッコロを倒す仲間を集める(飛影を優先) 6:ゲームの脱出 【大阪府/日中】 【津村斗貴子@武装練金】 [状態]:軽度疲労、左肋骨二本破砕(サクラの治療+核鉄効果により完治) 右拳が深く削れている 顔面に新たな傷、核鉄により常時ヒーリング 絶対に迷わない覚悟 [装備]:核鉄C@武装練金、リーダーバッチ@世紀末リーダー伝たけし [道具]:荷物一式(食料と水を四人分、一食分消費)、子供用の下着 [思考]1:さらに東へ。 2:クリリンを信じ、信念を貫く。跡を継ぎ、参加者を減らす。 3:ドラゴンボールを使った計画を実行。主催者が対策を打っていた場合、その対策を攻略する。 4:ドラゴンボールの情報はもう漏らさない。 5:ダイを倒す策を練る。 6:ピッコロ、友情マン等宇宙人にあった場合、ドラゴンボールの情報を聞き出す(友情マンはその後地獄の苦痛の中でブチ撒けます) ※”武装錬金”勢と”JOJOの奇妙な冒険”勢は同じ世界から来ています(公式設定:カズキが岸辺露伴の大ファンから) 投下順に読む Back 0413 穏やかな春の陽射しの下で Next 0415 アビちゃんの撤退大作戦 時系列順に読む Back 0410 暴走列島~信頼~ 0407 彼女の功績はあまりに大きく、あまりに残酷 津村斗貴子 0425 噫無情 0379 雪の陣~memento mori~ 桑原和真 0424 見えない未来へ
https://w.atwiki.jp/nwxss/pages/157.html
「くそったれ……!」 魔剣を構えたまま蓮司は吐き出すように声を漏らした。 蓮司の攻勢を立ちはだかるマーニは総てその巨躯で持って受け止めていた。 回避は一切しない。蓮司が抜けようとした時に限りマーニは俊敏に反応して前に立ち塞がる。 その動きからして蓮司の斬撃を回避するのはさほど難しい事ではないのは推測できる。だがマーニはそれをしない。 明らかに足止めだった。 ならば力でもって粉砕すればいいはずなのだが、それも叶わなかった。 最初の激突の際に両の腕が再生されていたのと同様、マーニは蓮司の斬撃を受けた傍から修復しているからだ。 圧倒的な再生力。元よりホムンクルスには致命以外の傷を修復する力があると聞いている。 恐らくはエミュレイターと融合した事により、それが大幅に強化されているのだろう。 攻撃を受けた傍から修復するというなら、一気に片をつけるしかない。 蓮司は意を決して魔剣を握る手に力を込めた。 自らの分身ともいえる魔剣が、主の意思を受けて脈動する。 柄にはめられた真紅の宝石が深い輝きを生んだ。 だが、それと同時に。 「!?」 マーニが地を蹴り、弾けるようにして大きく後退した。 後方にいたカズキと、そこに駆けつけていた斗貴子を追い抜いてリオンの下までかけるマーニ。 二人はマーニの動きに気付いていない様子だった。 何かに魅入られたようにリオンを凝視している。 蓮司は舌打ちして走り出した。 「……そんな、馬鹿な」 掠れるような声を斗貴子が搾り出した。 リオンの白い手に握られた黒い核鉄。 ある意味で、二人の始まりとなったモノ。 それはカズキの命と同化して、取り出す事ができないはずだ。 「――この核鉄を取り出すのは、”貴方達”では不可能。けれど、私ならそれができる」 斗貴子の言外の疑問に答えるように、リオンは囁いた。 まるで生徒に教授する講師のように、漆黒の少女は言葉を紡いだ。 「私はリオン=グンタ。世界に秘匿されたあらゆる秘密を掌握する者」 「あらゆる秘密……だと?」 「そう……例えば、あなた。津村 斗貴子」 「……?」 急に語りかけられて訝しげに睨み返す斗貴子を見ながら、リオンは薄く微笑を称える。 彼女は手にした書を広げ、その記述に眼を落としながら、小さく囁いた。 「貴女はこの前、武藤 カズキが溜め込んだ冬季休暇の課題を片付けるために二人で勉強をしていた」 「……は?」 脈絡のない話題の振り方に斗貴子は思わず呆気に取られた声を出してしまった。 しかしリオンは彼女の様子を気にする風もなく、更に言葉を続ける。 「しかし途中で武藤 カズキが寝入ってしまい、起こそうとしたけれど無防備な彼の寝顔に思わず――」 「うわああぁあああぁぁぁっ!!?」 唐突に斗貴子が叫び声を上げてリオンの声を遮った。 火を噴きそうなほどに顔を真っ赤にして、彼女はらしからぬ挙動で手をばたつかせる。 「なっ、なななな何故それを――違う、お前っ、何を言ってるんだ!!」 「私は”秘密侯爵”。お前の秘密を知っている……」 「と、斗貴子さんが寝入ったオレにどうしたんだ!?」 「なんでもない!! なにもしていないっ!!」 「……エロスはほどほどに」 「エロス!?」 「黙れリオン=グンタ! 貴様ふざけてるのかっ!!」 弛緩した空気を叩き壊すかのように斗貴子は地面を蹴り、ギッとリオンを睨みつける。 先の接触とは別の形で殺気を放っている斗貴子を眺めやりながら、リオンは愉しそうに口の端を歪めた。 「だって、もう『用事』は終わったから」 リオンの囁きと同時にカズキと斗貴子の背後から突風が吹き、巨大な影が二人の脇を通り抜けた。 影――マーニはリオンの下まで走り寄ると、傅くように身を沈める。 「このまま何もしないのなら、大人しく引き下がるのだけど……」 言いながらリオンはつと目線を移し、マーニを追って二人の下まで辿り着いた蓮司を捉えた。 蓮司は油断なく剣を構え、リオンの手にしている黒い核鉄に眼をやりながら口を開く。 「――事情はよくわからねえが、ソイツを手に入れて終わりって訳じゃねえだろ。何を企んでやがる……?」 「………」 リオンは答えなかった。 彼女は問われる限りにおいて偽らないと語った。 それを沈黙で返すという事は、その回答は蓮司達にとって不都合なものなのだろう。 「逃がすかよ……!」 切っ先をリオンに向け、じりと間合いを詰める。 斗貴子も気を取り直してバルキリースカートを展開し、カズキもまた己の胸からサンライトハートを展開させた。 黒い核鉄は奪われてしまったが、彼の身体にはその黒い核鉄の力を相殺するためのもう一つの白い核鉄が埋まっている。 パピヨンの手によって創られたそれは、力の作用はどうあれ核鉄である事には違いなかった。 故にカズキは今だ命を繋いでおり、そしてそれを武装錬金として発動させる事も可能のようだった。 光と共に形作られるランスを見やりながら、リオンは小さく息を吐く。 ――『本来の目的』とは違うが、せっかく手に入れたのなら試してみるのも一興か。 まるで世界の存亡を遊戯と称し享楽に耽る『彼女』のようだ、とリオンは皮肉気に微笑を閃かせた。 「………」 言葉なくリオンは三人に向かって腕を向ける。 その手に握られるのは、錬金術によって生み出された超常の核鉄。 「――!?」 「まさか――!」 斗貴子とカズキの顔が僅かに強張る。 戦慄の声を漏らす二人に応えるようにリオンは笑みを深くし、静かにその言葉を紡いだ。 「――――――――武装錬金」 ※ ※ ※ 「粉砕! ブラボラッシュ!!」 鍛え上げられた拳の散弾が迫る黒狼達の悉くを打ち砕く。 闇の破片となって吹き飛んでいくそれらを掻い潜るようにして黒狼がナイトメアに迫る。 振り下ろされる爪牙の前に、剛太が割り込んだ。 ナックルダスターで敵を打ち砕く。その隙に、ナイトメアが残る敵に向かって手を翳した。 「《リブレイド》!!」 力ある言葉と共に不可避の閃光が放たれ、黒狼達を包み込む。 紅の世界を染め上げるような白色に溶けるように黒狼達は消え去っていった。 ――くれはと同様に、ナイトメアにも広範囲を殲滅する魔法を所有していた。 だが、くれはのような高速術式を持ち得ない彼では、その長大な魔法を行使するには敵の数が多く、壁となる味方の数が少なすぎる。 結果としてブラボー・ナイトメア・剛太の三人は対症的に迫ってくる敵を逐次叩き続ける展開を余儀なくされ、悪戯に時間だけを消費していた。 だが、いかなクリーチャーとは言え無限無尽蔵に沸いてくると言う訳ではないようだった。 気付けば周囲を囲う黒狼達の壁は薄くなり、その攻撃も散発的になっていた。 「抜けるぞ、二人とも」 ブラボーの声に二人は頷き、そして三人は同時に地を蹴った。 動きに合わせて黒狼たちが駆ける。 行く手を阻むように前方の壁が厚くなり、後方から追撃の黒狼達が殺到する。 委細構わず壁を粉砕しようとブラボーが拳を構えた、その瞬間。 「……!」 黒狼達が塞ぐ前方の壁、その向こうで。 それまでに打ち倒し、今だ残る黒狼達のそれを総て合わせてもなお上回るほどの圧力が迸った。 「いかん……ブラボー!」 「わかっている!」 足を止めてブラボーは腰溜めに構え、全身に力を溜める。 移動に力を裂くような余裕などなかった。 背後から迫る殺気など、前方のそれに比べれば意識するにもあたわない。 「《フォース・シールド》ッ!!」 ナイトメアが光の結界を展開した、その刹那。 周囲の黒狼達を総てなぎ払い粉砕する、暴圧的な衝撃波が炸裂した。 「ぉおおおおっ!!」 放たれた圧倒的な力に、渾身の力を込めて正拳を叩きつける。 衝突した力の衝撃に周囲の地面が粉砕され、ビルの壁面が崩壊する。 そして真っ向からぶつかり合った力が吹き払われた後、残ったのは静寂。 黒狼達はその悉くがその衝撃に巻き込まれて消滅していた。 「――我が一撃を避けるではなく、受けるか。やはり有象無象では時間稼ぎにしかならぬな」 鋭い眼光を向けるブラボーの見つめる先で、がしゃりと金属音が響いた。 甲冑を纏ったその女は、露を払うようにして手にした魔剣を振り、三人を見据える。 その女はただそこに立っているだけだった。にも拘らず、彼女からは手にした得物と同じく鋭い剣気が放たれている。 「……魔王か」 「いかにも。我が名は”女公爵”モーリー=グレイ。主命により貴様等を討つ」 (主命、だと……?) モーリーの声を受けて、ナイトメアが浮かべた疑問がそれだった。 ”女公爵”モーリー=グレイ。裏界の序列第三位の階梯たる大魔王。 ベール=ゼファーによれば今回の件の首謀者は序列四位の”秘密侯爵”リオン=グンタとの事だ。 敵であるベルの発言を鵜呑みにするわけにもいかないが、少なくともモーリーが主命と言うのなら、彼女以上の存在が裏で糸を引いているはずだ。 モーリーよりも上位にある存在。そしてそれは今回の件に反目の意を示しているベール=ゼファーではない。 とするなら、残るは―― 「!」 まさに思考を断ち切るように、モーリーが手にした魔剣を一閃した。 おそらくは無造作に行っただけの行為に、彼女の足元の地面が割れ空気が圧力を増す。 ナイトメアは思考を中断し、意識を眼前の敵にのみ傾けた。 余計な事に気を取られていれば、即座にその身が両断されるだろう。 彼は掌に魔力を込め、力を紡ぎ出した。 剛太もまたモーターギアを構え、モーリーの正面に立つブラボーも、腰を僅かに沈める。 臨戦態勢に入った三人を静かに見据えながら、甲冑の魔王は静かに眼を細めて魔剣を構えた。 「貴様等に往く道はない。我が魔剣がその総てを斬って捨てる」 「――押し通る!!」 ブラボーが地を蹴り、モーリーが地を蹴り、両者の立つ地面が爆ぜた。 側面に回る気配など微塵もない。 奇しくも白銀をまとう両者は真正面から激突し、魔剣と剛拳の衝突に世界が震撼した。 ※ ※ ※ リオンの言葉と共に彼女の手に収まっている黒い核鉄が展開する。 同時に圧倒的な閃光が迸り、紅の世界を一瞬だけ白色に染め上げた。 そして蓮司達が眼にしたのは――巨大な砲身だった。 「な、なんだよコイツは……」 目の前に出現したソレに見入ったまま、蓮司が愕然とした呟きを漏らす。 それは一見して判断するならば戦車にも似ていた。 だが、数十mはあるだろうその巨大さは全容を確かめるのが困難で、その印象を伺えない。 まるで煙突のように天に伸びる砲身。それを支える胴体部。 内部に乗り込む、と言うよりは外側に取り付くのだろうか、側面などにタラップが見える。 「……『ドーラ砲』」 声を上げたのは蓮司達の後方、傷付いた沙織と彼女の治療に当たっているくれはを護衛している灯だった。 蓮司達に比して遠目だった彼女の位置からは全容を把握しその正体を看破する事ができたのだろう。 「二次大戦時、ドイツ軍が実用化した80cm列車砲。射程は約30km~47km、使用砲弾は4.8t榴弾もしくは7.1t徹甲弾」 すらすらと解説する灯と、出現した列車砲の威容に愕然……というよりは呆気に取られている蓮司達をよそに、リオンは屹立しているソレを 珍しく喜色を称えた表情を見上げていた。 「素敵……D311型があれば完璧だったんだけど」 黒光りする装甲を撫で擦り、彼女はゆっくりと蓮司達を振り向いて、彼等に向かって手を差し伸べた。 同時に、巨大な列車砲が振動した。それまで感じた事もない膨大な魔力が膨れ上がり、砲身へと収束していく。 明らかな攻撃の意図。砲に込められた力の強大さに蓮司達の全身に戦慄に似た悪寒が駆け巡る。 「くっ……!」 灯が述べた情報を信じるなら明らかに有効射程圏外だ。おまけに肝心の砲身は今だ天を仰いだまま。 更に言えば、列車砲の巨体。接近して張り付いてしまえば列車砲を無力化できるだろう。 だが、リオンが生み出したモノ――殊にそれが武装錬金であるのなら、眼の前にある列車砲が通常通りの規格であるはずもなかった。 迂闊な接近は正に思う壺なのだろうが、他に有効な手立てがなかった。 蓮司が歯噛みして地を蹴り、同じ結論に達しただろうカズキと斗貴子も走り出した。 その瞬間、蓮司は重大な事に気付いた。 「!!」 「蓮司!?」 渾身の力で踏み止まり、踵を返す。 蓮司の不可解な行動にカズキと斗貴子は一瞬だけ逡巡して、それを悟った。 リオンの造り出した列車砲に近接戦への対処法がなかった所で、自分達にその選択肢がなかった事に。 三人はリオンと充満する砲身の魔力に見向きもせず、背を向けて走る。 その先にいるのは、灯とくれは、そして沙織。 彼女達はあの場所からまともに動けないのだ。 「くそ……っ!」 三人の元まで辿り着き、改めてリオンを見据える。 彼女は酷薄な微笑を浮かべたまま、蓮司達を眺めていた。 巨大な砲身から雷光にも似た魔力が迸る。 退避する時間などなかった。そもそも、あの砲撃に対して逃げる場所があるとも思えない。 蓮司が魔剣を盾代わりに構え、プラーナを解放する。 カズキがランスの地面に突き刺し、背後の五人を守るようにエネルギーを展開する。 収束する魔力に対して余りにも無力に過ぎるその防衛線を見つめて、リオンは小さく声を漏らして笑った。 そして宣告する。 「―――臓物をぶち撒けなさい」 天に放たれた膨大な魔力が、紅の世界を染め上げるように降り注いだ。 ※ ※ ※ 魔剣と剛拳が交錯した。 瞬間、衝撃の余波で地面が砕けビルの壁面が割れ、張り巡らされたガラスが砕け散り吹き飛ぶ。 それだけの威力の一撃を正面から叩き込み、そして叩き込まれた両者は弾けるように吹き飛んで、数m後退した後停止した。 モーリーが再び攻勢をかけようとブラボーを見た、その瞬間。 閃光が視界を覆った。 「《リブレイド》ッ!!」 「はぁっ!!」 剣刃、一閃。 避けきれぬと悟ると同時彼女は手にした魔剣を振りぬく。 魔力の塊をその一振りで叩き斬った後、彼女はその刃を翻した。 光の中からブラボーが躍り出る。無論、彼女がそれを予期しないはずがない。 返しの刃をブラボーの胴に叩き込む。 彼の纏うシルバースキンと魔刃が交錯し、火花を散らす。 一太刀で地を割り山を裂く魔剣の一撃は、しかし武装錬金の中で最硬を誇るシルバースキンを打ち砕くには至らなかった。 ち、と舌打ちをして片手を上げる。 装着した手甲から腕、肩、身体まで貫く圧倒的な衝撃。 腕で防御すると同時に地を蹴ってその衝撃を緩和する。 その隙間を縫って飛来する何か。おそらく投擲武器。 それをモーリーは僅かに動くだけで対処した。 避ける程には動いていない。甲冑の隙間を狙ったそれを、打点をずらして甲冑で受け止めただけだ。 魔剣を受け止める徒手空拳の男と、魔法を放つ背後の男。 これは彼女にとって対処に値する存在だった。 だがもう一人……投擲武器を扱う少年は、脅威と断ずるはおろか対処を意識する必要もなかった。 彼女のそんな判断は、少年――剛太にも容易に見て取れていた。 (くそっ……歯牙にもかけやがらねえ……!) 彼の持つ武装錬金、モーターギアは攻撃力において他の多くの武装錬金に劣る。 それは彼自身が一番理解していた。 だが、それでも剛太は自らが戦士であるという自負を持っている。 にも拘らず、目の前の敵は剛太の事を一瞥にも値しない存在だと判断していた。 それが彼には腹立たしかった。 「そのコート……見てくれよりは硬いようだな」 剛太の憤りを他所に、モーリーはブラボーだけを見据えて小さく呟く。 瞬間硬化による衝撃相殺と、高速再生による修復機能。 数合の接触のみでシルバースキンの特性を看破した彼女は、眼を細めて魔剣を強く握り締めた。 モーリーの纏う魔力と剣気が更に膨れ上がる。 それまでよりも更に鋭さを増した魔剣を構え、モーリーは―― 「――!?」 瞬間、世界が砕けた。 紅く染め上げられた世界がガラスのように砕け、周囲は暗闇の世界に包まれる。 同時にモーリーの魔力が減退し、彼女は僅かな驚愕と共に天を仰いだ。 それまで世界を照らしていた紅の月は姿を隠し、代わりに仄かに青白い月が漂っている。 「……っ!」 同時に走りぬけた悪寒にモーリーは反射的に地を蹴って後退した。 それまで彼女のいた場所を、ブラボーの拳が通り抜ける。 ち、と舌打ちしてモーリーは中空へと飛び上がった。 「リオン……!?」 空へと退避した後、モーリーは再び青白い月に眼をやって呟いた。 状況を解説するのは簡単だった。 月匣が解除されて、通常の世界へと戻っただけだ。 しかし、単に戻っただけであるのならモーリーは動揺などする事はない。 彼女が戸惑ったのは、その通常の世界への『戻り方』だ。 これは月匣を展開したリオンがそれを解除したのではない。何者かによって月匣が『破壊』されたのだ。 向こう側の勢力によって倒された、という訳ではないだろうが、不測の事態があったのは間違いない。 モーリーは柳眉を歪めて地上にいる三人を見やる。 彼女自身が月匣を展開して戦闘を続行する、というのも手ではあった。 だが、今回の件がリオンに一任されている以上放っていく訳にもいかない――というより、リオンが欠けるなら三人と戦う意味がなくなる。 モーリーは一度瞑目した後、手にした魔剣を虚空に消し去ってその場から姿を消した。 それまでの破壊がまるで幻であったかのように普段通りの街並みを取り戻した世界の中、ブラボー達はようやく合流のために動き出す事ができた。 ※ ※ ※ 白い閃光が総てを埋め尽くす。 リオンが造り出した列車砲から放たれた魔力は、五人の防御の限界を遥かに越えていた。 無駄だと悟りつつ、そして絶無の可能性を理解しつつ、それでも五人は閃光に対して身構える。 蓮司が放出したプラーナも、カズキが放出したエネルギーも、迫りくる暴圧の前では紙切れにも満たない。 一瞬にして防御が打ち砕かれ、身体が魔力に呑まれる。 痛みさえも感じないのが、救いといえば救いだった。 蓮司が、カズキが、斗貴子が、くれはが、沙織が、光に消える。 そんな中で一人だけ。 灯だけが、その声を聞いた。 『悪いが、お前はここで退場だ』 「―――」 それが誰の声であるか、灯にはわからなかった。 ただ彼女に理解し得たのは、自分の胸から、鮮血に染まった誰かの腕が生えている事だった。 『特別に、ここにいる連中は助けてやろう。 だからお前は安心して舞台を降りるがいい』 「―――」 ごふ、と口から血を吐き出す。 そして腕を抜かれた胸から、口から出た以上の鮮血が溢れ出した。 何時の間にか、膝をついていた。 気付けば自らが作り出した血だまりに倒れこんでいた。 『お前に相応しい舞台は、ここではないのだからな――』 「―――」 嗜虐と嘲りに満ちた誰かの声。 最近聞いたような気がする。いや、もっと以前か。 一年? 十年? 百年? あるいはそれ以前、遥か遥か遠い場所。 流転する運命の鎖が遡る、その果てで。 同じような痛みを感じながら、ダレかと共にその声を聞いた―― ※ ※ ※ 「……いけない」 武装錬金を核鉄に戻しながら、リオンは溜息と共にそんな言葉を吐き出した。 頼りない月明かりが照らす銀成学園のグラウンドは、もはや見る影がないほどに完全崩壊していた。 だが、それでも先の攻撃の規模からすれば僥倖とも言うべき被害だろう。 月匣がなければグラウンドどころかこの学校が存在する丘そのものが消失していたはずだ。 もっとも、リオンにとってみれば人間たちの学校やその住居がどうなろうと関わりのない話である。 彼女にとって計算外だったのは、武装錬金による攻撃が彼女の予想よりも大きかった事だった。 出現した列車砲を見て、自覚以上に高揚してしまっていたのだろう。 高まりすぎた出力が自らの展開した月匣をも粉砕してしまったのだ。 威力という点だけで見れば、裏界に存在する本体にも近しいその一撃。 無論、その直撃に晒された蓮司やカズキ達が耐えられるはずがない。 ”殺す予定ではなかった”のだが、これでは臓物どころか欠片一つも残らない―― 「……?」 リオンはソレを見止めて僅かに眉を潜めた。 何もかもが崩壊したその瓦礫の中に、六人がいた。 恐らく意識はないのだろう、全員倒れ伏して微動だにしない。 だが、彼等は生きていた。 戦闘不能ではあるが、間違いなく生きている。 いかに防御魔法を張ったとて、いかにプラーナを全開にしたとて、耐えられる規模の攻撃ではなかったはずだ。 ありえない状況を前にしてリオンはほんの僅かに動揺し―― 「……少々遊びすぎではないかな、リオン?」 その間隙を突くように、背後から肩を抱かれた。 「っ!!」 心臓を鷲掴みにされたような悪寒にリオンは身を震わせた。 だが、身体を動かす事はできなかった。 まるで抱き竦めるように肩に手を回されていたのもある。 だがそれ以上に、その声を聞いてリオンは硬直してしまったのだ。 それは男の声だった。 まるで恋人にそうするように優しく、しかし堕落を誘う蛇のように絡みつく声色。 リオンは背後から自分を抱く男に眼を向ける事さえできず、普段の無表情からは想像し難い震えた声を搾り出した。 「魔王、アスモデート……」 自らを呼ぶ声を受け止めて、アスモデートは満足そうに微笑を浮かべた。 そして彼は身を竦ませているリオンを宥めるように黒髪を優しく梳く。 「ガアッ!!」 その場において唯一動き得たのは、リオンの傍に侍る巨狼――マーニだった。 咆哮と共にマーニはアスモデートに爪牙を振るう。 しかし彼は身構えるでもなく、彼女の髪を撫でながら、その眼だけをマーニに向けた。 瞬間、マーニの身体が吹き飛ばされて地面に叩きつけられる。 四肢を刹那の間に切断されて、胴体と頭だけになった巨体が押し潰されるように地面に貼り付けられた。 「分際をわきまえろ、狗風情が」 マーニに眼を向けたまま、アスモデートが唾棄するように呟いた。 アスモデートの意識が僅かなりともマーニに向けられた事でどうにか気を取り直したのだろう、リオンが掠れるような声を漏らした。 「アスモデート……何故貴方がここに」 「何故? 決まってるだろう。ようやく待ち望んでいた刻が来たのだ、あの娘を殺される訳にはいかないんだよ」 話しかけられた事で気を良くしたのか、アスモデートは再びリオンに眼を向けて笑みを浮かべた。 彼は今だ視線を合わせないリオンの顎に、鮮血に濡れた手を寄せて顔を上げさせた。 触れられる度にリオンの身体を怖気が走り抜けるが、彼女は抵抗できなかった。 彼女の身体を弄ぶこの魔王は、その気になれば今しがたマーニを一蹴してみせたようにリオンを消し飛ばす事もできる存在だからだ。 リオンの嫌悪と恐怖がない交ぜになった顔を見つめながら、アスモデートは愉悦に満ちた笑みを浮かべてみせた。 「それに、君も助かっただろう? なんせアレを死なせてしまっては、『あの女』の小細工も無意味になってしまうのだからな」 「……!」 リオンは驚愕に眼を見開き、アスモデートを凝視した。 彼女のそんな視線を受けて、彼は苦笑を閃かせる。 「おいおい、まさか私が気付いていないとでも思っていたのか? 随分と侮ってくれる――ああ、いや。『あの女』はいつでも他者をナメているんだったな」 くつくつと昏い笑みを零しながら、アスモデートはリオンの頬を指で撫でた。 緋室 灯の血で染まった指がリオンの白い頬に紅い痕を引く―― 「……この、下郎がっ!!」 横合いから暴圧的なまでの魔力が叩きつけられた。 アスモデートと、彼が抱いているリオンとを構わず粉砕するような斬撃が放たれる。 彼はリオンを開放し、激情のままに振るったモーリーの魔剣を片手で受け止めた。 いかなアスモデートとはいえ裏界屈指の大魔王たるモーリーの一撃を完全に防ぐ事などできはしない。 彼は爆砕するかのような衝撃を受けて吹き飛び、モーリーとリオンから数十メートル離れた場所でようやく停止した。 「やれやれ。男と女の秘め事に割って入るとは……相も変わらず無粋だな、モーリー」 魔剣を受け止めた手を軽く振りながら、アスモデートは余裕の表情を崩さずにモーリーを見据えた。 彼女は嫌悪感も露にアスモデートに向かって魔剣を構える。 「アスモデート……貴様、何故ここに居る!」 「それはもうリオンに言ったんだが……まあいいか」 言ってアスモデートはグラウドに倒れ伏している六人――その中でただ一人、胸を穿たれている灯に眼を向けた。 彼女の血で染まった指を舐めて、彼は口の端を歪める。 「こちらの要求は一つだけだ。この場は大人しく去ってもらおう。自分でやっておいてなんだが、アレは速やかに治療してもらわねばならんのでな。 緋室 灯を戦線から外してしまえば後はお前達がどうしようが私は手を出さん」 「我々がそれを信じると思うのか」 「……相手はいなくなってしまったが、私とて遊戯に興ずる身。お前たちの『遊び』の邪魔はせんさ。 生憎こちらは準備がもう少しかかる……私の手番は次の機会としよう」 「……『次』などありません。この書物に記された結末は――」 「いいや。お前達の企みは失敗する」 書物を抱える手に力を込めて語るリオンを遮って、アスモデートはそう断言した。 予言を否定されたリオンは小さく眉をしかめるが、委細構わずアスモデートは言葉を続ける。 「例え私がこれ以上手を出さずとも、例えお前の書に企みの成就が記されていようとも、ソレは必ず失敗する。何故なら――」 アスモデートは天地総てをかき抱くようにゆっくりと腕を広げた。 そして陶酔と恍惚が極まった、見る者に戦慄を与えるような凄絶な笑みを浮かべながら、魔王は宣言する。 「世界を滅ぼすのは、この私――魔王アスモデートだからだ」 ――およそ裏界に存在する者の中で、この男ほどに『魔王』という呼称が相応しいモノは存在しない。 ”金色の魔王”ルー=サイファーや”蝿の女王”ベール=ゼファーと並び謳われる『悪徳の七王』が一角。 この世界の神の力を以てしても倒しきる事が叶わないほどの超越的な力を誇る暴虐の大魔王――それがこのアスモデートだ。 「……モーリー。ここは退きます」 「リオン!?」 驚愕の視線を送るモーリーに、リオンはアスモデートを見つめたまま小さく頭を振った。 彼の手によって頬に引かれた朱線を拭い、元の無表情をようやく取り戻してから彼女がモーリーを見る。 「元より彼等は生かしておく予定でした。ここで彼と戦うのは得策ではありません」 理屈ではそうだろうが、ここで納得できるようなモーリーではない。 だが、今回の件を主導するリオンがそう言うのなら、彼女としては引き下がらずを得ない。 口元をいびつに歪ませ、不遜な態度でこちらを見やる魔王に眼を向けて、モーリーは怨嗟を込めて言葉を放つ。 「アスモデート……貴様は必ず妾が滅する」 「お前には無理だ。まあ、『飼い主』が一緒に来るというのであれば、遊んでやってもいいぞ?」 「……っ」 嘲りを露にしたアスモデートの態度にモーリーは唇を噛み、怒気を膨らませる。 今にも弾けそうな彼女の魔力を制止したのは、リオンの細い腕だった。 僅かに震えているリオンの身体を見てとって、モーリーは口惜しげにアスモデートを一瞥すると、その場から姿を消した。 「ここで引けば、貴方はもう手を出さないのですね?」 「勿論だとも。私は紳士だからな」 おどけるように肩を竦めるアスモデートにリオンは僅かに眉根を寄せてたが、それ以上は何も言わずに距離を取った。 魔力によって縛り付けられるマーニの元まで辿り着くと、彼は指を弾いてその戒めを解除する。 そしてリオンは最後にアスモデートに眼を向けた。 「では私は観客に戻るとしよう。楽しませてくれよ、”秘密侯爵”」 彼はまるで道化師の如く、しかし慇懃に一礼をしてみせる。 ソレに一切応える事なく、リオンはマーニと共に姿を消した。 そして語らう者のいなくなったその場所で、アスモデートは静かに回りを睥睨した。 崩壊したグラウンド。そこに倒れる六人。 倒れこんだ武藤 カズキと津村 斗貴子。 胸を貫かれた緋室 灯。 河井 沙織と、彼女に覆いかぶさる様に意識を失っている赤羽 くれは。 そして最後に――彼の競争相手でもあった、魔王ディングレイを堕とした魔剣使い。 「……ふ」 堪えきれなくなったのか、彼は僅かに背を丸めて吐息を漏らし――やがて弾けるように笑い出した。 アスモデートは天を仰ぎ、狂ったように哄笑する。 「はは……あはははははっ! さあ頼んだぞ錬金の戦士! 星の巫女! そして柊 蓮司! 世界の命運をお前達に託そうではないか! 存分に踊り狂って楽しませてくれ!!」 高らかに謳いながら、アスモデートは夜空に溶けるようにしてその姿を消していく。 そして、蟲の羽音のように不快な嗤い声の残響だけが、暗闇に沈む世界に残った。 ← Prev Next →
https://w.atwiki.jp/monmas_x/pages/1715.html
水着ティアマット 種族 タイプ 属性 レア コスト HP 攻撃 魔力 防御 素早 パッシブスキル名 パッシブスキル(最大時) 獣 魔法 回復 ★4 12 1555 775 2150 924 958 ヒールマスター 【全】ヒール回復量1.5倍全体化 ★5 22 2044 910 2806 1043 1119 光輝なる海底 【全】ヒール回復量2.5倍+麻痺耐性(小) 詳細 2016年8月 水着ガチャ限定 アビリティ 【個】防御が150アップ 【個】素早さが200アップ 【個】人間族からのダメージ10%カット 【個】妖怪族からのダメージ10%カット 進化素材 獣の魂×3、獣の超魂×1、500,000G ★4・★5スキル ヒール 味方一人のHPを回復 今日 - 昨日 - 合計 -
https://w.atwiki.jp/souku/pages/3284.html
《公開済》SNM001887 シナリオガイド 公式掲示板 巨大エロたこ+水着=後は分かるな? 担当マスター 西里田篤史 主たる舞台 パラミタ内海 ジャンル 冒険 募集スケジュール 参加者募集開始日 参加者募集締切日 アクション締切日 2012-07-28 2012-07-30 2012-08-03 リアクション公開予定日 募集時公開予定日 アクション締切後 リアクション公開日 2012-08-15 - 2012-08-12 サンプルアクション (シナリオ参加者の方にお願い、サンプルアクションの具体的な内容を補完していただけないでしょうか)(サンプルアクション名の下の四角をクリックするとでてくる「部分編集」をクリックすると登録できます)(もしくはサンプルアクション登録用掲示板へお願いします。) 女性契約者と戦闘 +... [部分編集] ▼プレイヤーの意図 PCが洗脳された女の子たちと海で組んず解れつしてるところが見たい。 ▼キャラクターの目的 女性契約者と戦闘 ▼キャラクターの動機 むしろタコ退治より優先するべきでしょ ▼キャラクターの手段 洗脳されてあんなタコを慕ってるなんて可哀想だよ、早くなんとかしてあげないと。 墨を洗い流せば洗脳が解けるなら海水に浸ければ墨も落ちるでしょ? 服とかは濡れると嫌だから水着で行くけど……ちょ! 水着引っ張らないでってば! エロタコと戦闘します。 +... [部分編集] ▼プレイヤーの意図 エロタコに捕まって、エロいことをされているのが見たい。 ▼キャラクターの目的 エロタコと戦闘します。 ▼キャラクターの動機 巨大タコを退治するつもりだったのですが……。 ▼キャラクターの手段 とにもかくにも巨大タコを退治しないと……と思ったんですけど。 なんなんですかこのエロタコ! どこに触手伸ばしてるんですか! ううう……気持ち悪い……誰か助けてください〜! 水着姿になって男たちを誘惑します。 +... [部分編集] ▼プレイヤーの意図 水着姿のPCが見たい。 ▼キャラクターの目的 水着姿になって男たちを誘惑します。 ▼キャラクターの動機 男たちを内部分裂させて戦わずして勝利したい。 ▼キャラクターの手段 水着姿になって男たちを誘惑します。 この中で一人だけ勝ち残ったらキスぐらいしてあげるって言えば言う事を聞いてくれるかしら? それとももっと凄い事……? まあ、やってあげないんですけど(笑) その他補足等 [部分編集] 【タグ:SNM パラミタ内海 冒険 正常公開済 西里田篤史】
https://w.atwiki.jp/ryouhouji/pages/1264.html
壱 弐 参 極 名前 [雪水着]古椿の霊 (ゆきみずぎ ふるつばきのれい) セリフ 壱 「あなたも散らしてあげましょうか?」 弐 参 極 解説 老いた椿の樹木に精霊が宿り、怪木と化したものとされている。花の落ちる様が命の終わりを表すともいわれ、古来より畏れの対象となっている。 レアリティ 必要法力 攻 防 知 壱 SSR 30 6500 5490 5880 弐 7020 5930 6350 参 7580 6410 6860 極 9100 7690 8230 術式名 属性 MAX Lv 効果 専:誘いし花弁 土 10 味方単体の攻防アップ お邪魔戦術式 発動率 攻撃力アップ 中 備考: